9月の「百星かるた会」レポート
 14人もの選手と、6人のガイドさんとサポーター、ゲストも含めると、総勢22名もの人が、9月のかるた会に参加してくれました。
 この日の学習テーマは、「秋の風景を味わう」でした。
 ところで、風景は見えませんし、ほぼ、触ることは出来ません。その風景が詠み込まれた歌をどう味わうのか?渡邊寛子さんに、解説して頂きました。
 味わうポイントを、「紅葉」「動物・聴覚」「夕暮れ」「露」「草花」という、実際に触れたり匂いをかいだり、あるいは日々の生活実感があるものなどに項目分けし、それらが歌の中の、歌人の想いを伝えるどんなことのシンボルになっているのか?…胸を焦がすような熱い恋の象徴だったり、儚さがより強調されたり…。
 そうした「歌の中の役割」を理解することで、歌人が風景描写に潜ませた思いに「触れる」ような解説を、渡邊寛子さんがしてくださいました。
 聞き終わった参加者から、ほおっとため息…やっぱり和歌はいいなあという思いに包まれるお話でした。
 その勉強した歌、15首が書いてある札を使って、午後からは、かるた取りです。
 そう、ここからがもうひとつのテーマ「団体戦に強くなる」です。およそ1か月後には、初めての「全国大会」があります。百星の会は、かるたが活動のメインではありますが、ワークショップで恋文を送り合ったり、平安時代の男性の烏帽子を作って被ってみたり、ぜ〜んぜん関係ない点字付きゲームで盛り上がったり?!と、普段は、面白そうなことのつまみ食いばかりしている会…ですが、大会となれば、そんなこと言ってはいられません!気を引き締めるべく、ゲストに、今年の「かるた甲子園」個人戦 準優勝に輝いた・齋藤選手に来て頂きました。
 試合の様子や、戦術、緊張のほぐし方などを、DVDを観ながらお話して頂き、
「自分達もこんな風にやってみたい」
というイメージを掴み、意欲が高まって行きます。
 今年行われたかるた甲子園の団体戦のビデオ上映と、斎藤選手による解説も行われましたが、団体戦の映像を見て驚いたのは、チーム内で掛け声をかけあうなど、音
が多いことでした。かるたの試合というと、クイーン戦のような、静けさの中で、畳がこすれる音だけがわずかにする、というイメージでしたが、団体戦は違うのですね。むしろ、緊張をほぐしたり、仲間を励ましたり、声を掛けることで、モチベーションを高め合ってゆく姿は、みんな初めて知りました。
 齋藤選手の得意戦術の「囲い手破り」も、手をとめたままの形でじっくり触れて観察させてもらえました。益々、対戦で使ってみる気マンマンです!
 さて、「団体戦」は、こんなルールで進めます。
 3人で1チームになり、使う札15枚を、チーム内で話し合って、分けて持ち、自分の前にあるかるた台に並べます。(※大会では、25枚に増えます)
詠まれた札を、相手チームよりも早く持ち上げたチームに、1点入ります。札は、日本全国どこでも注文すれば買える・京都ライトハウスの札の裏に、決まり字を付けたものを使用します。
 札は、読まれる度にかるた台から外して、より触れて読みやすくします。
 手の位置は、公正を期すため、読手が前の歌の下の句を読み始めたら、膝の上に置きます。(その時は、札やかるた台に触れてはいけません)
 「おてつき」は、点字を読むために触れている分にはなりませんが、間違えた札を持ち上げたら、チームの総合展からマイナス1点としてみました。
 また、今回「同時」というルールも作ってみました。審判から見てほぼ同時に札が取られた時は、どちらのチームにも1点ずつ入ります。
※この辺りは、審判の判定が非常に難しいところです。なので、対戦するとき、テーブルの配置は「長机に同じチームの選手3人が座る。対戦相手の長机と対面する位置に置き、審判が両チームの手の動きを見比べて判断しやすいようにする」としてみました。
  4チームを作り、1回戦目で勝ったチーム・負けたチーム同士で、2回戦目を戦いました。
 その場でチーム編成をしたので、まずはチーム内で、あいさつ・自己紹介・そしてチーム名を決めてもらいます。「紅葉」「チームせせらぎ」「はりねずみ」「おはよう!中野くん」といつもながら個性的なラインナップ…ここまでは和やかでした。
 チームごとに作戦会議に入り、それが終わると、あらら??自分の前に、かるた台が無い選手がいるではありませんか?!この辺りから、ドラマチックな風
が吹き始めます。
 ”渡し忘れかしら?”と、サポーターが慌てて持っていくと「いりません。机に直接置いた方が、もちあげやすいから」
 ええ〜?!驚くサポーター。するとすかさず
「そうですよ。私なんか、ほら、机のへりに沿って並べたので、手前に引くだけで持ち上げられるんですよ」
 もう、常識はずれのアイデア2連発!さ、さすが「百星」のメンバー、すぐに、より札を取りやすいように、工夫しちゃうのが、すごい…
 そして、試合が始まると、今度はチーム内の情報伝達がすごい!
  「おてつきしちゃってごめんなさい」「ドンマイ!それより、私の札は丁度なくなりました。誰かのをもらえますよ。」「これ1枚お願いします」…という風に、より効率的に札を取れるように、チーム内で素早く札の調整をしているのです。前半に観た団体戦の映像が、私達の団体戦も変えつつあるようです。
 結果は、優勝が「おはよう!中野君」準優勝が「はりねずみ」でした。
 感想を伺ってみました。「楽しかった〜」は、いつもの通りです。しかしそれ以上にも、次のような意見が寄せられました。
意見1:いつも使っている、湾曲した札の方が取りやすい。読み手の歌には早く反応出来るが、それを持ちあげるという動作は、別の問題の難しさがあるので、真の「かるたの実力」を計れない。
意見2:持ち上げにくいので、「払い落とす」タイプの、”かるたの土俵”のようなものが出来ないか考えています。「札を飛ばす」と、盲学校でかるたの練習をするときに、札を回収できずに困ってしまうので、土俵のようから下に落とすのであれば、札を払うスピードもアップするし、札が回収しやすいと思うんです。
 ご意見ありがとうございました!こうやって、すぐに次のアイデアが出される…こうやって、百星の会のかるたは、ここまで進化してきたのだと、またまたジ〜ンと嬉しくなりました。涙…いえいえ、感動して泣いてばかりもいられない。すぐに次の手を考えました。というのも
意見3:「八つ橋型の札でないと、百人一首を続ける気がしない」という意見も多数届いています。全国大会もあり、点字毎日にも載って、新しく興味を持って手に取ってくれる人が多いこのチャンスに、意見1のような持ちにくい札があっては、集まった人も離れてしまいますよ! 
 こうしたキビシイ意見が出たからです。でも、ここで凹まずにすぐ次の手を考えるのが、やっぱり「百星」で、すでに新しいアイデアで動き出しています…
 というわけで、次回10月22日(火・祝日)のかるた会では、それらを体験してもらえるように準備しておりますので、ぜひ、次回もお越しください!(開場は、
高田馬場「生活支援センター」です)